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「家の人は心配してないか?」

「はい。さっき電話しましたから。家にずっと閉じこもっているよりは良いって言われました」

「そうか」

初めて来る幸希さんのアパートは、一人暮らしのせいか少し散らかっていたけれど何だか落ち着いた。

この感じは、あのライブハウスに初めて入った時とよく似ている。

初めての筈なのによく知っているような懐かしい感覚。

まるで何度も来た事があるかのように。

「一応、今までに作ってストックしてある曲が何曲かあるから試しに聴いてみるか?こんな感じが良いっていうのがあるかもしれないし」

「あ、はい」

幸希さんがデッキを用意している間、ふと小さな本棚の上に飾ってある一枚の写真に目が止まった。

幸希さんと一緒に映っている一人の女の人の姿。

優しげに微笑む綺麗な女性。

すぐに恋人同士だと分かった。

そっと目を逸らして自分の胸に手を当てる。

胸が痛い。

こんな感情は今まで知らなかった。

一緒にいると切なくて暖かくて。

叫び出したい程もどかしくて泣きそうになる。

どうしてだろう。

まるで、私が私じゃないみたい。

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