16


「白凪玲歌さんから、伝言があるんです」

私の口から出たその名前に、幸希さんが目を見開く。

私は視線を逸らさずに続ける。

「死の直前に、彼女が貴方に伝えたいと強く願った記憶です」

幸希さんも吸い寄せられるように私から、私の中の玲歌さんから目を逸らさない。

「そのままお伝えします」

自分の胸に手を当てる。

そこにあるのは今も正確にリズムを刻む鼓動。

「『幸希、返事が出来なくなってごめんね。私も貴方の事が本当に大好きだったよ。私がいなくても、これからも音楽を楽しんでね』です」

「……っ」

幸希さんは息を吐き出し、涙を隠すように顔を背ける。

私はそっとその腕を引き寄せて、胸に抱き締めた。

私の中の、この温かな鼓動が聞こえるように。

せめて今だけは、玲歌さんの存在を感じられるように。

- 25 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet