08


「成程。華憐が貴方の事を知ったのは、その時でしたか」

「ああ。だがその日の事を、俺は全然覚えていなかった。さっき夢に見るまで、忘れていたんだ」

どうして忘れていたのだろう、あんなに大切な事を。

自分の中で、全てが変わった瞬間を。

「恐らく彼女が記憶を封じたんでしょう。貴方を解放する為にいつか自分が死んでも、貴方が悲しまないように。全てを忘れて生きて行けるように」

「……っ」

紫陽は目を細めて蒼を見詰める。

「けれど、死のうとした彼女を他の誰でもない貴方が助け、生きろと言ったのでしょう?だから華憐は生きて出来る事をしようとしたんです」

「……あれも、そうなのか」

目の前に紅い血が飛び散った瞬間を思い出して、声がかすれた。

「はい。抑えている貴方の魔力を限界まで引き出させるには、少しずつ力を解放させた上で、我を忘れる程に余裕を無くさせる事が必要でした。それには、側にいる女の子が目の前で傷付くのが効果的でしょう。貴方も華憐と同じで、自分自身より他の誰かが傷付く方が苦しい人でしょうから。最終戦で魔力を使って戦うように仕向けたのは、その為です」

「どうして、そんな事をあんたが……」

「それが、華憐の望みだったからですよ」

そう答えた紫陽は、小さく息をつく。

「貴方と共にいてゲームに参加していたのも、全てその為だったんですよ」

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