09


「華憐がそう、あんたに言ったのか」

「いいえ。でも分かりますよ。華憐の様子を見ていれば」

その声の調子に、ふと以前の華憐の言葉を思い出した。

向こうの世界で、初めて会った時の事だ。

『私の大切な人も、そう呼んでくれていたのを思い出しただけです』

もう遥か昔のような、記憶の中の懐かしい声。

あれも、きっとこの紫陽という男を想っての言葉で。

今もまだ無様に張り裂けそうに痛む胸に、深く息を吐きながら口を開く。

「……ああ、そうだろうな」

血が付いたままの手で髪をかき上げ、独り言のように呟く。

「何であいつは、俺なんかの為にそこまで……」

あんな、今まで忘れていた昔の約束を果たして。

何も言わないまま姿を消した。

『私はいつも、貴方の幸せを願うよ』

幼いあの頃と同じ優しさを残して。

- 278 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet