09
「華憐がそう、あんたに言ったのか」
「いいえ。でも分かりますよ。華憐の様子を見ていれば」
その声の調子に、ふと以前の華憐の言葉を思い出した。
向こうの世界で、初めて会った時の事だ。
『私の大切な人も、そう呼んでくれていたのを思い出しただけです』
もう遥か昔のような、記憶の中の懐かしい声。
あれも、きっとこの紫陽という男を想っての言葉で。
今もまだ無様に張り裂けそうに痛む胸に、深く息を吐きながら口を開く。
「……ああ、そうだろうな」
血が付いたままの手で髪をかき上げ、独り言のように呟く。
「何であいつは、俺なんかの為にそこまで……」
あんな、今まで忘れていた昔の約束を果たして。
何も言わないまま姿を消した。
『私はいつも、貴方の幸せを願うよ』
幼いあの頃と同じ優しさを残して。
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Reservoir Amulet