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「……華憐はあんたが行ってやった方が、きっと歓ぶ。ずっと信じていた、大切な人なんだからな」

「あの日。国が滅んだも同然となり華憐が姿を消した日、華憐は僕の手を取る事を拒みました。僕の選んだ道に同意出来ないから、共に歩む事は出来ないと。絶対に屈する事無く戦うと、そう言って別れを告げました。けれど華憐は、貴方の手を拒みはしなかったのでしょう?」

その言葉に、蒼が困ったように髪をかき上げる。

「いや、俺が無理矢理腕を掴んだっていうのが正確なんだが」

「そんな細かい事はどうだっていいんですよ。貴方と会って、一緒にいて華憐が変わったのは確かなんですから。僕には決して向けなかった瞳を、貴方には向けていた」

そんな事は、ある筈無いと思うけれど。

それでも、華憐から紫陽の話を聞いた夜の、大きな瞳を濡らす涙をふと思い出した。

意地を張らずに自分に素直になれと言った時の、一瞬こちらに向けた張り詰めた瞳を。

何かを語ろうとして口を閉ざし、代わりに涙を流した。

その、僅かな希望に縋って。

会いたいと思う気持ちに素直になってもいいのだろうか。





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