06
彼女でなければ。
もう自分には、彼女がいなければ。
そう思いながらもしばらくその後ろ姿を見詰めて、ベンチから立ち上がる。
(まさか……)
考えるよりも先に足が動き出していた。
少し前を歩く制服姿の少女は、あちこちに包帯を巻いていた。
あの時紫陽が撃った弾で負った怪我が、魔力を与えた為にまだ治っていないのではないのか。
もしかして、あれは本当に。
胸が高鳴る。
距離が縮まる程に確信出来る。
間違いない、あれが自分が捜し求めていた、たった一人の。
怪我をしている少女はあまり速くは歩けないようで、蒼はやがて追い付いた。
手を伸ばし、細い腕を掴むのと同時にその名を呼ぶ。
「華憐」
「……っ」
驚いて振り向いた大きな瞳と目が合う。
「俺の事を、覚えているか?忘れたなんて言わせないぞ」
「蒼……。どうして、此処に貴方が」
「どうしてって決まってるだろ。捜したんだぞ」
久し振りに会った華憐は、気のせいか急に大人びて見えた。
華憐が蒼の手を振り解いて目を伏せる。
何も言わない華憐に、蒼は険しい顔で言う。
「こんな所に一人で来て、国はどうする。逃げる事なんて許されないと言っていたのは誰だ?逃げ出して生きて行くつもりだったのか。あんたがそんな奴なんて思わなかったぞ。俺も、皆も心配しているんだ」
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Reservoir Amulet