08


「じゃあ今は何か分かった事があるのか」

華憐は小さく溜息をついた。

「私が無力だって事だよ。私は国を背負えるような者じゃなかったの。王家に生まれたから自分には出来ると考えていたなんて、浅はかで愚かだった。私はただの、無力で無知な女の子でしかないんだよ」

その言葉に、蒼は奇妙なものでも見るような目をした。

「何を言ってるんだ。国の為と戦いに出たのは何処の誰だ?」

「それだって私一人でした事じゃない。私は支えられてばかりで、一人で出来る事なんて何も無い。私には国の再建しか無いって自分に言い聞かせて来たのに、実際は違った。そう分かった瞬間に、何もかもが壊れてしまったような気がして」

蒼は不機嫌な顔で言った。

「だったら、どうしてその時に俺に相談しなかったんだ。どうあっても、俺達は仲間だろう。華憐が何を選んでどんな結果になったって、俺はそれを責めたりしない。何も言わないで一人で姿を消して。俺はそれに怒ってるんだ」

「本当にごめんなさい。心配させてしまうのは分かっていたけど、もう何も考えられなくなってしまったの。ただ、一つの事以外には。気付いたら、私にはそれしか無くて。だから言えなかった。言ったら、貴方がいなくなってしまう気がして」

華憐は顔に掛かった髪を払い、蒼を真っ直ぐに見詰めた。

「蒼は私の事、いつまでも子供だと思ってるよね。でも私もずっと考えていたんだよ。本部で結婚式があった夜、自分の気持ちに気付いてから」

前を見て、思い起こすように続ける。

「小さい頃、一度会っただけ。それも僅かな時間で、その人は私の事を覚えていない。だけどまた私の前に不意に現れて、側にいてくれた。それでどれだけ救われたか、分からない」

華憐の口調に、何故か胸が高鳴った。

誰の事を話しているのかは何となく分かるけれど、まさかそんな筈は。

「優しさや暖かさを沢山持っているのに、本当の自分を隠すのが得意で。だけどその人自身にも悲しみや苦しみがあって。私にとっては全てが愛しいの。自分では気付いていなかっただけで、私はずっと貴方が好きなの。でも私のこの感情は、きっと貴方を傷付けると分かっていたから」

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