15
「……馬鹿だな」
しばらく黙ってから、蒼が口を開いた。
「俺は華憐を、ずっと側で見ていたんだぞ。優しさを強さを、戦いをずっと見ていた。その俺が言ってるんだ。少しは信じろよ」
「蒼、でも……」
戸惑うように揺れる澄んだ瞳を見詰めて言う。
「女王になれよ。華憐なら、出来るさ。もしも不安なら俺は何度でも誓う。忠誠を」
華憐が見上げる明るい色の瞳は、真剣な熱さを秘めて。
静かで力強い言葉が、心の奥にまで届いて。
「俺は、華憐の創る国を見てみたいんだ。俺に出来る限り力を貸してやるから」
「……うん」
涙が溢れ、頬を伝う。
そっと涙を拭ってくれる手を、今度は避けようとは思わなかった。
こんなに大切で、こんなに大好きな人に巡り会えたのは、何て幸福な事だろう。
この人がいてくれるなら、望んでくれるのなら。
もう二度と戻らないと決めたあの世界へ、再び向かおう。
導いてくれる優しい手を放さずに。
「有り難う、蒼」
幼い日に寂しく笑っていた貴方が、こんなに暖かく微笑んでくれるなら。
それだけできっと、傷付けるしか出来ないと思っていた自分の意味もあったのだろう。
誰かに甘えたり、縋ったりする事が許されるのなら。
前へ進んで行けるから。
潰されてしまいそうで、自分だけでは立ち上がれなくても。
隣に誰かがいてくれるなら、世界はこんなにも優しい。
知らなかった世界へと、いつも貴方は私を導いてくれる。
大好きな人だから、側にいたい。
貴方に出会えたから、私は生まれて良かった。
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Reservoir Amulet