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「どうしたんだ?急に」
「どうしても今言いたいの。向こうに戻る前に」
目を伏せて続ける。
「貴方も、もう知っているよね。私が幾度も嘘を重ねていた事を。この世界に来てすぐに、私は貴方の記憶を封じて代わりの記憶を入れた。世界を渡る事で魔力を沢山使って、命が削られてしまったのが分かったから。だから全て忘れて此処で生きて行けるなら、それで良いと思ったの」
咄嗟に決断して思い出を封じた。
迷う暇など無かった。
「でも貴方の魔力は少しずつ回復していて、同時に記憶も戻って来ているのが分かった。だから私は貴方に近付いた。一緒にいればいつか貴方の魔力を全て引き出して私の力と引き換える事も出来るかもしれないと思って封じた記憶を戻した」
そして再び世界を渡った。
「本当は分かっていたの。忘れるだけでは何の解決にもならないと。でも、それでも生きていてくれれば、いつか何かが変わり始めるかもしれないから。貴方を解き放つ機会も巡って来るかもしれないから。そう思って私は何度も、貴方の大切な思い出を操って嘘をつき続けた。……ごめんなさい」
目を上げて、黙って聞いている蒼を見詰める。
「きちんと謝っておきたかった。自分勝手な理由で大切な人も偽る自分が、ずっと許せなかったの。でも貴方がいるから、貴方が好きだと言ってくれるから、私は私でいる事を少しずつ許せる気がするから。だから有り難う、蒼」
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Reservoir Amulet