desolatecity.10


まだ一度も、そんな恋をした事は無い。

何人女と付き合っても、いつも何処か冷めていて。

「……いつか見付かるといいね、そんな恋が」

人事のように言って微笑んだ華憐の口調が気に入らず、その額を指で軽く弾く。

「せめて自分も見付けたい、位は言えよな」

「あ、うん……。そうだね」

華憐は言うに言われぬ眼差しで、荒れ果てた街を見た。

「いつか、自分を許せる時が来たらその時は……見付けられたら、いいな」

それは、痛みを忘れないように自らに刻み付けているような瞳だった。

顔を上げ続けている為に、自分自身を許さずに。

夢見る事も、泣く事も許せないままで。

そんな状態で戦おうと言うのか。

掛ける言葉を持たない代わりに、蒼は黙って華憐の手を握った。

それは雨に濡れた子猫を抱き上げるように自然に出た行動で、蒼は自分でも驚いた。

華憐も驚いたようだったが、何も言わなかった。

蒼の大きな手に安らぎを感じて、縋るようにそっと握り返す。

背の高い横顔を見上げて、静かに願う。

この人に見付かるといい。

辛く切なくても、甘く愛しい恋が。

最愛の人と囁き合う、愛の時間を優しい貴方にあげたい。





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