05


騎士団長の家に着くと、穏やかな微笑と声が皆を迎えた。

「お帰りなさい、華憐」

「紫陽……」

華憐は一瞬泣きそうな顔をしたが、すぐに微笑んだ。

「ただいま」

そう言ってから、少し考えて言い直す。

「お帰りなさい、紫陽!」

「……華憐、僕は」

紫陽の言葉を遮るように、華憐が続ける。

「小さい頃から、私に大切なものを沢山くれたのは貴方だよ。だからお礼を言わせてね、有り難う」

出来なかった事や届かなかった事、後悔は消えないけれど。

もしも今此処から、もう一度始められるなら。

「もし良かったら、これから少しずつ私にお返しさせてほしいな」

「でも僕は君から多くのものを奪ったのに……取り返しがつかない程に」

「貴方がやらなくても、いずれ誰かが同じ事をした筈だよ。王家への不満は、それ位募っていたから。多くのものを傷付け犠牲にして来たのは私も同じ。だから、だからこそ私はもう一度新しい国を築きたい。争いや苦しみの無い、新しい国を」

華憐は一瞬蒼の方を見て、暖かな瞳をした。

「頑張れると思うの、今なら」

付いた傷跡は消えなくても、全てを抱いて前へ。

「紫陽がいつもそうしてくれたように、辛い時には私が側にいるから。いつか女王になっても、私は私だから」

手を伸ばし、そっと紫陽の手を取って握り締める。

「だからもう、一人で何処かに行ってしまわないで」

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