06


この手を放したら、また遠くへ行ってしまいそうだから。

あの時掴めなかった手を、今度こそ放さないから。

伝えられなかった気持ちを、今なら言えるから。

紫陽の手を自分の頬に当てて続ける。

「こんなに温かな手の貴方が、此処にいてくれて本当に嬉しいの」

「……華憐。どうか泣かないで下さい」

華憐の頬を伝う涙を手に感じて、紫陽が口を開く。

「君は本当に優しいですね。あの頃と、ちっとも変わらない」

そう言って、優しく華憐を抱き上げる。

幼い頃、一人隠れて泣いていた華憐にいつもそうしたように。

「そうですね。君はきっと女王になっても、いつまでもこのまま可愛いんでしょうね」

その暖かな雰囲気は、まるで兄と妹のようで。

昔の二人を知らなくても、そこに見えるかのようだった。

見守る蒼と華憐の目がふと合い、華憐が柔らかく微笑む。

『紫陽を信じ続ける事。もしも紫陽の事を私が何一つ分かってなくて、理解出来なくて置いて行かれてしまったとしても。あの人がいつか、立ち止まった時にふと後ろを振り返る時があるかもしれない。その時を信じて最後まで待つ事』

その言葉通り信じ続けて頑張り続けた華憐を知っているから、その思いが通じた事が心から嬉しい。

そして自分の事のように嬉しくて、心から微笑み返せる自分が嬉しい。

時間は速く緩やかに過ぎて、少しずつ自分でも気付かないままに変わって行くものも変わらないものも。

今なら小さな変化もそのままに、自分を好きになって行ける気がする。





- 315 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet