09


風に髪を任せたまま、静かに語る。

「いつもは貴方に連れ出されるところで目が覚めたんだけど、今日は違ったの。時間がその直前で止まっている。他に誰もいない死滅の静寂の中で私は一人、この身の死以外に罪を償う術を持たないで……犠牲を重ねた生を終わらせようとしている」

握り締めた鎖が、手に痛い。

「どんなに時が経っても、忘れてはいけないの。過去は消えはしないから。だから、時々怖くなる。また同じ事を繰り返してしまわないかって。蒼の言葉を信じてない訳じゃないけど、私は私が一人の無力な女の子である事も知ってる。私の選択で、またあの夢を繰り返してしまったら」

失われたものは、もう戻らない。

蒼はしばらくの間、何も言わなかった。

黙ったまま、服の上からでも分かる肩の細さを感じていた。

この華奢な肩に、華憐は国と民を負っている。

それがどれ程重いのか、想像もつかないから。

「……なあ、華憐」

やがて、蒼がゆっくりと言った。

「俺はガキの頃から自分の役目を、未来を知っていた。先が長くないからこそ、何度も考えたんだ。命の意味を、生きる事の意味を、何度も何度も考えた」

- 330 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet