10


今まで誰にも話さなかった、格好悪く足掻いていた自分。

でも華憐には知ってほしい。

そんな格好悪さも好きだと笑ってくれた、大切な人には。

「投げやりになって、荒れた時期もあった。時間を掛けて自分に言い聞かせて、生きる事を諦めようとして来た。だが、そんな俺でも今は生きていて良かったと思える。生きたいと素直に思えるんだ」

雲の切れ間から、月の光がこぼれた。

月明かりに浮かび上がる華憐の白い肌が、長い髪の向こうに見える。

夢のように。

「今だから言える。生きるって悪くないな。見苦しい程、足掻いて迷って見えるものもあるんだ。だから俺は、華憐に会えたんだ」

あの時すぐに諦めていたら、そうしたらきっと華憐と出会う事は無かった。

「俺が今こうしていられるのは、華憐のおかげだ」

「蒼……」

不安に震える体を、後ろからそっと抱き締める。

痛みを、少しでも分けてほしくて。

温もりを求めるなら、寂しさを拭うように側にいるから。

「華憐がいなかったら、俺は多分今頃生きていない。だから、礼を言わせてくれ。有り難う」

耳元で、静かに語り掛ける。

「国なんて大き過ぎて、それを背負うのがどれ程重いのか、俺には分からない。だが、華憐は分かるだろう。一人一人の命の価値が、大切な人を失う事の痛みが。一人一人を大事に出来るなら、民全てを大事に出来るさ」

- 331 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet