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今まで誰にも話さなかった、格好悪く足掻いていた自分。
でも華憐には知ってほしい。
そんな格好悪さも好きだと笑ってくれた、大切な人には。
「投げやりになって、荒れた時期もあった。時間を掛けて自分に言い聞かせて、生きる事を諦めようとして来た。だが、そんな俺でも今は生きていて良かったと思える。生きたいと素直に思えるんだ」
雲の切れ間から、月の光がこぼれた。
月明かりに浮かび上がる華憐の白い肌が、長い髪の向こうに見える。
夢のように。
「今だから言える。生きるって悪くないな。見苦しい程、足掻いて迷って見えるものもあるんだ。だから俺は、華憐に会えたんだ」
あの時すぐに諦めていたら、そうしたらきっと華憐と出会う事は無かった。
「俺が今こうしていられるのは、華憐のおかげだ」
「蒼……」
不安に震える体を、後ろからそっと抱き締める。
痛みを、少しでも分けてほしくて。
温もりを求めるなら、寂しさを拭うように側にいるから。
「華憐がいなかったら、俺は多分今頃生きていない。だから、礼を言わせてくれ。有り難う」
耳元で、静かに語り掛ける。
「国なんて大き過ぎて、それを背負うのがどれ程重いのか、俺には分からない。だが、華憐は分かるだろう。一人一人の命の価値が、大切な人を失う事の痛みが。一人一人を大事に出来るなら、民全てを大事に出来るさ」
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Reservoir Amulet