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華憐が不意に城の奥に視線を向けた。

それを受けて足音が近付き、やがて一人の男が姿を現した。

まだ若いが、蒼よりは年上だろう。

そしてその雰囲気は、城内に満ちる暗い静けさによく似ていた。

(……こいつ、やばいな)

蒼は華憐を庇うように立ちながら鋭く相手を観察する。

この男からは、かつての自分と同じものを感じる。

自分には何も無く、持っている僅かなものさえいずれ奪い取られるという未来。

勝ち目の無い戦を、完全な負け戦を、自分の望んだ事ではなくとも戦い抜くという意志。

絶対に負けると分かっているのに足掻き続けて、そんな自分を自分で嘲笑って。

諦め切れないのに、心の奥ではもう諦めて絶望を受け入れて。

そんな、あの頃の自分と目の前の男が重なる。

そういう嘆きに慣れた者は強い。

己の身や心を省みない、引き返せない強さがある。

蒼は危ういところで華憐に救われた。

では、この男はどうなのだろう。

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