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決まり悪そうに髪をかき上げた蒼に向かって、更に言葉が重ねられる。

「そうだよ。いきなり来て急にそんな事を言い出すなんて怪しいよ。何か裏があったりしないよね?」

「可愛げが無いな。こういう時の賛辞は素直に受け取れよ」

蒼は息を吐いて腰に手を当てた。

「まあでも、裏があるのは否定出来ないけどな」

「え?」

「華憐が女王として忙しいのは分かってる。だが俺に一週間……いや三日でいい。時間をくれないか?」

蒼の声はいつに無く真剣で、冗談で言っているのではない事はすぐに分かった。

「……どうして?」

尋ねると、蒼はそっと華憐の手を取った。

「理由は後で分かる。俺と一緒に来てくれないか?もし嫌なら無理にとは言わないが」

躊躇ったのは一瞬の間だけだった。

この優しい手を拒む事など、自分にはいつだって出来はしない。

静かな夜から連れ出して、明るい世界を見せてくれたのは貴方なのだから。

「一緒に行く」

華憐は愛しい瞳を見詰めて、囁くように答えた。

ありのままでいいと教えてくれた人には、嘘なんてつけない。

今の自分が在るのは、全て貴方のおかげだから。

連れて行ってほしい。

何処へでも、このまま。

「よし、決めたな。後で取り消しは無しだぞ」

その言葉に思わず笑顔を浮かべながら、華憐は力強い腕の中に自分から飛び込んだ。

連れて行って、このまま。

静かな夜の向こうまで。





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