nostalgiamind.04
決意を胸に顔を上げた時、蒼が騎士団長の家へ続く庭に足を踏み入れた。
他の家と比べてもそんなに大きくは無かったが、最も奥にあるので庭は深い森へ繋がっていた。
城に近いせいか見慣れた木も多く、初めてでも何処か懐かしく思える。
あの日以来帰っていないけれど、不思議な位木々の香りや葉の色を覚えている。
そう思った途端に城の庭に戻ったような錯覚がして、華憐は胸が締め付けられるような痛みを感じた。
失われてしまったかけがえの無いものは、もう二度と戻らない。
それでもまだ、懐かしい家の記憶がこうして胸を締め付ける。
いつか痛みだけではなく、暖かな思い出も全て受け入れられる日が来るのだろうか。
「じいさん、客だよ」
長い間留守にしていたようには見えない態度で家に入って行った蒼は、すぐに外に戻って来た。
辺りを見回して、箒で庭を掃いていた中年の女性に尋ねる。
「美野里【みのり】さん、じいさんが何処に行ったか知ってるか?」
「あらまあ、蒼さん。お久し振りね」
美野里はのんびり挨拶をしてから答えた。
「本部の見回りに出掛けられたんですよ。ああ、お帰りになられたようです」
その言葉に驚いて振り向くと、いつの間にか後ろに腕組みをした老人がいた。
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Reservoir Amulet