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およそ百年にも及ぶ、世界的な大戦争。
伝え聞いた始まりは、本当に些細な国家間の諍いだった。
それがやがて周囲の国を巻き込み、大きく二つの勢力に分かれての戦争に発展した。
しかし今を生きる人々の中に、この始まりを知っている者はどれだけいるのだろうか。
ライオスは息を吐いて、さびれた酒場の中を見回した。
街を歩いていても、こうした場所に入っても、疲れ切った人の顔ばかりが目に映る。
戦争は人々の暮らしから、働き手と地の実りを奪い取っていた。
そして、本当の笑顔さえも。
侵略と奪略を繰り返しながら、それでも終わらない。
始まりを忘れてしまったから、終わりも見えないのだろうか。
そう、今この世界には戦争の中で生まれた者しかいない。
自分を含めて、平和とはどんなものかは皆知らない。
争いの無い安らぎを知らない。
それなのに、平和な世界を創って行けるのだろうか。
不意に、そんな不安が訪れる事もある。
このままではいつか戦争が終わったとしても、また始まってしまいそうで。
だから、誰か一人でも良い。
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Reservoir Amulet2