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ライオスの後ろに隠れるようにしているアウローラが、小さく震えた。
それを自分の体で隠しながら、感情を表に出さずに応じる。
「いえ、見ていませんが。我々が通った方へは来なかったのでしょう」
「……そうかもしれないな」
一人が頷くと、他の男も賛同した。
「あれだけの傷を負わせたんだ。山越えは無理だろう」
「今頃はもう、何処かでくたばっているさ」
「御用はお済みですか。では、我々はこれで」
ライオスはそう告げると、アウローラの手を引いてその場を離れた。
あまり足早にしては怪しまれる。
しかし男達から離れるにつれ、歩く速度はどんどん速くなった。
やがて人目に付かない路地まで来て、ようやく立ち止まる。
掴んだままの小さな手に、いつしか痛い程力を込めていた。
息を切らしたアウローラが、深い色の瞳で見上げる。
そちらを見ようとせずに、ライオスは呟いた。
先程からかろうじて留めていた言葉が洩れた。
「何が臆病な裏切り者なんでしょう。人を殺さない選択をするのが、弱さですか。そんなのは当たり前です。おかしいのは、狂っているのは、人を殺さなければ生きて行けないこの世界の方だ」
この考え方が間違っているなんて、どうしても思えない。
誰に諭されようと、責められようと。
狂っているのは当然のごとく戦争を続ける人々だ。
どうしてそれ以外の道を模索しようとしない。
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