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船から降り立ち、久し振りに大地を踏む。
無事に勢力間を移動出来たのは、やはりお忍びとはいえ王子であるルセスがいた事が大きいのだろう。
戦争の間に、国の権力者が交渉などで他国を訪問するのは珍しくない。
暗殺の危険などもあり、安全とは言えない仕事だ。
それなのにルセスは、飛び出したライオスを捜してはるばるあそこまで来たのだ。
無事に帰れた事に対して感謝の気持ちはあるが、借りを作ってしまったようで面白くない。
そんなライオスの心境を知ってか知らずか、二人の方に歩み寄って来たルセスは無表情のまま言った。
「行くぞ、王がお待ちだ」
一応罪人として扱われている上、他にも同行している者達がいる。
後ろ手に縛られて武器も取り上げられたまま、ライオスはアウローラと共に先に立つルセスに続いた。
剣は旅に出る時に用心として腰に帯びた。
実際、何度か役に立った時もある。
しかし今は手元から離れた事に安堵感さえ覚えていた。
自分の意志を貫くのに、武器などいらない。
人を傷付けたくない、そんな考えは弱さの表れでしかないと教え込まれて来た。
軍を率い、煽り、争いへ突っ込む。
そんな在り方を、ずっと叩き込まれて来た。
そこから目を背けるのは、臆病者でしかないと。
しかし、そうではない。
真の勇気とは、何も持たないところから生まれるのだと。
空【から】の手にこそ、守れるものもあるのだと。
今なら、確信を込めて語れるから。
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