32
二人の手を縛る縄を断ち切り、ライオスを見据えて続ける。
「ならば、賭けてやろうじゃないか。お前の理想とやらで、父上を動かしてみせろ」
「貴方に言われるまでもありません。元よりそのつもりです」
「…………」
頭を下げたアウローラに目を向け、ルセスは笑みを深くして言う。
「弟が迷惑を掛ける。貴女は側にいてやってくれ」
「…………」
アウローラが頷いたのを見て、ルセスは剣を収めて背を向けた。
そのまま立ち去って行くのを見送りながら、ライオスが口を開く。
「全く、相変わらず勝手ですね」
幼い頃から自分が戦いを嫌っていた為に、王である父の期待はルセスに集まった。
それでもそんな重圧など全く感じさせず、淡々とやるべき事をこなす。
自分の意志より何より、王子としての務めを優先させる。
考え方は違えど、その姿に前を行く背中に。
ずっと、憧れていた。
役目を捨てて飛び出して自分の意志を優先させた弟に、恨み言の一つも言わないところが。
腹立たしい程、彼らしい。
言葉にする気など無いけれど、この借りはこれからの働きで返そう。
貫く事を選んだ理想に賭けてくれた、信頼を。
「…………」
気遣う瞳でそっと袖を引いて来たアウローラに微笑み掛ける。
「私なら大丈夫ですよ。さあ、行きましょうか」
これまで背を向けて来た事に、決着をつける。
変わらない流れに、ささやかであれど変化の石を投じよう。
諦めを知らない意志を、理想を。
今こそ、恥じる事無く高らかに語るべき時だ。
- 51 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet2