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二人の手を縛る縄を断ち切り、ライオスを見据えて続ける。

「ならば、賭けてやろうじゃないか。お前の理想とやらで、父上を動かしてみせろ」

「貴方に言われるまでもありません。元よりそのつもりです」

「…………」

頭を下げたアウローラに目を向け、ルセスは笑みを深くして言う。

「弟が迷惑を掛ける。貴女は側にいてやってくれ」

「…………」

アウローラが頷いたのを見て、ルセスは剣を収めて背を向けた。

そのまま立ち去って行くのを見送りながら、ライオスが口を開く。

「全く、相変わらず勝手ですね」

幼い頃から自分が戦いを嫌っていた為に、王である父の期待はルセスに集まった。

それでもそんな重圧など全く感じさせず、淡々とやるべき事をこなす。

自分の意志より何より、王子としての務めを優先させる。

考え方は違えど、その姿に前を行く背中に。

ずっと、憧れていた。

役目を捨てて飛び出して自分の意志を優先させた弟に、恨み言の一つも言わないところが。

腹立たしい程、彼らしい。

言葉にする気など無いけれど、この借りはこれからの働きで返そう。

貫く事を選んだ理想に賭けてくれた、信頼を。

「…………」

気遣う瞳でそっと袖を引いて来たアウローラに微笑み掛ける。

「私なら大丈夫ですよ。さあ、行きましょうか」

これまで背を向けて来た事に、決着をつける。

変わらない流れに、ささやかであれど変化の石を投じよう。

諦めを知らない意志を、理想を。

今こそ、恥じる事無く高らかに語るべき時だ。





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