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「彼女はアウローラ姫です。百年間、魔法により眠りについていたのです。彼女が高貴な生まれである事は、見ればお気付きになるでしょう」
「百年の眠り……だと?」
冗談を話しているようには見えない様子に、王は眉をひそめて問い返す。
「はい。詳しい経緯は知りませんが、姫が眠っているという事実については反勢力内にて御伽噺として口伝えに広まっております。百年前に何があったかは私にも分かりません。しかし現在、平和であった頃の世界を知る者は彼女だけでしょう」
「平和……。まだそれを主張するか」
「何を言われようとも、私は考えを改める気はありません」
ライオスは口調を強め、更に続ける。
「これ以上戦うのはお止め下さい、王。今、我々に必要なのは争う事ではない。争いを止める勇気です」
「世界中が戦っている状況で、我が国だけが止めて何になる?それともその姫が、世界を変える力を持っているとでも?」
厳しい視線を向けられ、アウローラが否定の素振りをする。
「無力な姫か。それならば、ただの娘と同じだな」
「無力なのは我々も同じでしょう」
ライオスは、すかさず切り返した。
「一人では戦争を終わらせる事など出来ません。世界を変える力など、持っている者はおりません。彼女は至って普通で……しかし間違い無くこの世界に必要な、唯一無二の存在です」
確信の込められた言葉は、重ねるごとに熱を帯びて行く。
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