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幼い頃から、信じられるのは自分だけだった。

生き抜く為に他人を傷付け、奪いながらその日その日を暮らしていた。

今までに一体どれだけの血を浴びて来たかは、自分でも分からない。

やがてその悪行で人々を恐れさせていた盗賊団の一員として拾われた。

それでも自分以外信じられないのは同じだった。

誰がいつ裏切るかわからない。

誰も信用出来ない。

仲間だと気を許せば最後、簡単に斬り捨てられる。

そうやっていなくなった者を、何人も見た。

盗賊に弱い者などいらない。

ひたすら強くならねば、生き残れない。 

人の物を奪って生きる盗賊のやり方は徹底していた。

捕らわれる事の無いよう、自分達のいた形跡は絶対残さない。

目撃した者は殺す。

家でも村でも、火を掛けて跡形も無く。

自分達の痕跡は全て消す。

その中である日、泣きながら幼い子供を庇う母親の姿を見た。

どうかこの子だけはと頭を下げる姿に、一瞬躊躇いが生まれた。

自分にもこんな風に、命を掛けて守ろうとする母親がいたのだろうか。

朱い血の海の中、子供を抱き締めたまま倒れる亡骸を見て初めて思った。

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