01


何の音もしない世界。

何も見えない世界。

自分は死んだのだろうか。

これから地獄へ行くのだろうか。

もう二度と、彼女に会えない事だけは確かだ。

穢れなど知らない綺麗な魂の彼女は、必ず天国へ行くだろうから。

結局、感謝の一つも伝えないままになってしまった。

生に縋るつもりは無いけれど、それだけは悔やまれる。

自分のせいで傷付いた彼女は、今幸せだろうか。

こんな自分にも、彼女の幸せを願う事位は許されるだろうか。

そう思った時、誰かの手が額に触れるような感覚があった。

小屋で伏せっていた頃を思い出す、懐かしい感覚。

(神無……)

その名を心で呼んだ瞬間、ふっと意識が覚醒した。

ゆっくりと目を開けると、微笑む娘の姿が見える。

「良かった……!気が付いたんですね」

耳に届く、柔らかな優しい声。

(神無……?)

唇を動かして呼ぼうとしたが、上手く言葉が出て来なかった。

黙ったまますぐ側に座る娘を見詰め、妙な事に気付いた。

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