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夜、暖かな火が燃える囲炉裏の側でいつものように二人で食事をする。

暮らしは質素で食事もいつも同じような味の粥ではあったが、不満など全く無かった。

この一杯を得る為に、汗水流して働く事を知っているからだ。

他愛の無い事を語らいながら食事をする一時は、和やかで心休まる大切な時間だ。

まだ一度も、そう伝えた事は無いけれど。

氷月は食べ終わった椀を置き。囲炉裏の向こうの神無を見た。

「神無、僕は明日から何日か留守にするから」

突然の言葉に、神無は目を瞬く。

「出掛けるの?何処へ?」

「ちょっと山の向こうへね。街まで行ってみれば、僕の記憶を取り戻す手掛かりが見付かるかもしれないし」

「……そうだね」

少しだけ寂しそうな顔をしてから、決心したように神無が言う。

「そうだね、このままではいけない。貴方にもきっと心配してくれる誰かがいて、本来の居場所があった筈。いつまでも此処にいてはいけない。……寂しくなるから、今まで言えなかったけど」

ほんの少し睫毛を揺らし、目を伏せて続ける。

「本当はね、氷月にずっと此処にいてほしい。でもそれは私の我が儘だから。貴方が本当の貴方に還る日が来る事を、心から願うよ」

再び真っ直ぐに向けられた瞳は、僅かに濡れている為か炎を映して驚く程綺麗に見えた。

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