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「だけど、もしも出掛けた先で記憶が戻っても、帰って来て。一度だけでいいから。お別れも言わないなんて寂しいし、私も本当の貴方に会ってみたいし。……本当の名前も知りたいし」

「神無。僕は氷月だ」

それだけは、変わらない。

そう伝えたくて、神無を見詰め返す。

「前の僕がどうだったか、なんて関係無いよ。今の僕には、神無の知る氷月だけが全てなんだから」

以前の自分を知っても、神無は今のままでいてくれるだろうか。

そんな不安は常に付きまとうけれど。

「だから帰って来る。絶対に」

いつか終わりが来るとしても。

それまでは必ず、この儚い夢の眠る場所へ。

「私、ずっと待ってるね。氷月」

「ああ」

今はただ、眼差しと微笑だけを交わして。

果たせると信じて約束を交わして。

夜が明けたら、空気が張り詰めた寒い外へと。

君が好きだと語った、冬の凍て付く月が浮かぶ夜を越えて。

夢を抱く者の強さで歩き出す。

知らない記憶に怯える心を封じて。

この先には何が待つのか。

密かに求める優しい未来か、それとも。






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