05


氷月はきっと、自分で思っているよりずっと優しい。

だからだろうか。

あの夜に聞いた話が、たまらなく切ない。

もう何度も何度も自分の中で繰り返したように、淡々と語る氷月の声。

淡い月光に照らされた、大人びた横顔。

思い出す度に、泣きそうになる。

朱の光景が、脳裏に浮かぶようで。

この人はこれまでに、一体どれ程自分を責めて来たのだろう。

後悔して来たのだろう。

想像も及ばないから、今はただ。

ただ、貴方を温められたらいい。

此処にいていいんだと、生きていていいんだと、いつか分かってほしいから。

「氷月さんは訓練からのお帰りですか?」

この季節に汗をかき、髪が乱れている様子を見て尋ねる。

「そうだよ。勇さんと手合わせしてた」

「勇さんと?強かったでしょう」

「うん。あの人は凄いね」

並んで廊下を歩きながら、他愛の無い会話を交わす。

前よりずっと氷月が打ち解けてくれているようで、それがとても嬉しい。

前よりずっと此処での生活に馴染んでくれたようで、そう感じる度に嬉しくなる。

こんな感覚を、自分は知っているような気がする。





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