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「……私なの、氷月」

神無は繰り返すと目を伏せた。

「時の向こうで、あの村で、貴方と過ごしたのは私なの。私も貴方と同じで、命が消え失せる寸前に、こちらへ呼び寄せられた。強い願いが、叫びがあったから」

「…………」

思わず言葉を失う。

告げられた内容を一瞬理解出来ず、ただ呆然と見返す。

「私、ずっと貴方に……」

言い掛けて、神無の姿がぐらりと揺れる。

慌てて手を伸ばし、意識を失った彼女を受け止めた。

瞳を閉じた白い顔を見返すと、ぱちぱちと炎の爆ぜる音が聞こえて来るようだ。

頬に触れた細い指。

一筋こぼれた朱い涙。

全ての力を振り絞る声。

力無く垂れた腕。

たまらずに溢れた、言葉にならない叫び。

冬の大地を舐め尽くす、熱い炎。

そして、世界は全て朱く染まる。





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