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鏑は頭をかくと、煙草に火を点けた。
「あいつ、最初は本当に人形みたいでな。いつもぼんやりとして、ただ泣いてばかりいた。神崎の奥さんも天承さんも心配して、よく一緒にいてくれた」
神無があの巫女、翼と何処か似ていたのは、その為なのかもしれない。
記憶が無く自分自身が分からないような状況では、側にいる人の影響を強く受ける事もあるだろう。
「その内に少しずつ話すようになって、自分の名前を教えてくれて……。俺を父親と呼んでくれるようになった。それが嬉しくて、笑顔が見られるようになったのが嬉しくて……。神無になるべく過去の事を隠すようにしていた」
長く息を吐き出すと、白い煙が空中に立ち昇る。
「お前が来た時、似ていると思った。格好とかの様子がな」
鏑は詳しくは語らなかったが、何を言いたいのかは分かった。
全身血まみれで、あちこち焼け焦げた様子の事を言っているのだろう。
当然だ。
二人、同じ状況からこちらへ来たのだから。
着いた先の時間は間が空いたようだが、来た時の様子が似ているのは当然だ。
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Reservoir Amulet2