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氷月はゆっくりと手を伸ばし、簪だけを受け取った。
冬の凍る月のような色の飾り玉が揺れる。
「……後は、捨てていいよ」
「はい、分かりました」
何も訊かずに頷いたのは、やはり彼女が優しいからだろう。
「では私は失礼しますね。氷月さんはお疲れでしょうし、休んで下さい。また後で来ますから」
神無は軽く頭を下げ、衣を抱えて静かに出て行った。
一人になって立ち尽くしたまま、手にした簪を見詰める。
『私、冬の凍り付くような月が好きなの』
血に染まった朱き月は、君が好きだと語った氷になれるだろうか。
そんな夢へ、辿り着けるのだろうか。
哀しく愛しい想い出を抱いて。
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Reservoir Amulet2