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隣の部屋のドアの前には鏑がいて、ぼんやりと煙草を吸っていた。

「お父さん、煙草は程々にして下さいね」

そう言いながら近付くと、鏑は頭をかいて苦笑した。

「まあいいじゃねえか。固い事言うなよ」

煙を吐き出し、神無の腕の中の衣に目を止める。

「それ、あいつのだな」

「あ、はい。捨てて良いとの事でしたので」

「……ひどい目に遭って来たんだろうな」

その言葉に、神無は自分が抱えている衣に視線を落とした。

「そうですね……」

無理に聞き出したりはしたくないけれど、それ位は容易に想像出来る。

此処に着いた時の氷月の様子は凄まじかった。

体は血を浴びたように朱く染まり、衣は焦げていて。

頬には涙の跡があった。

「あいつがどんな人生を送って来たかは分からん。本人が言っていたように、人を殺しながら生きて来たのかもしれない」

鏑はいつに無く真剣な口調で語る。

「それでも、あいつ自身が悪かったとは言い切れない。今と昔じゃ、時代も環境も違うだろうしな。少なくとも、俺は泣いていたあいつを諦めたくはねえんだよ」

「はい。私も同じです」

迷い無く頷いた神無を見て、鏑は微かに笑って続けた。

「何故かあいつは、お前には少し気を許してるみたいだしな。しばらくは面倒見てやってくれ。氷月がこれからどうなるか、それはきっと、お前に掛かってる」

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