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思わず息を飲んだ氷月に向かい、言葉は続けられる。

「と、以前の私は思っていました。もう、充分生きましたから。長く存在するというのも、案外楽ではありませんし。長く生き過ぎて、昔は知っていた大切な事とか持っていた大切なものを忘れてしまって。知っていたのか持っていたのかすら曖昧になって。自分がいる意味なんて、分からなくなってしまいますから」

それは果ての無き道。

始まりも終わりも見えなくなった、時という道。

「しかし、今は違います。長く生きて、沢山のものを見られた事を、今は感謝しています。人の抱く暖かな気持ちを尊い想いを、私はいつも見て来ました。……悪意から生じる闇も同時に見て来ましたが。それでも、価値ある想いの力を信じています」

あらゆるものを映して来た紺青の瞳は穏やかで。

想いを悪意を知った後だから信じられる強さで。

微かで確かな灯火を秘めているようだった。

「確信を持って言えます。この世界は、滅ぶべきではありません。沢山の綺麗な想いが息衝き、愛しい人達が生きている世界は、救われるべきです。そう分かったから、分かる事が出来たから、私は大丈夫です」

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