04


痛め付けられる記憶だとしても、忘れてはいけない。

忘却に逃げるなんて、もう許されない。

もう繰り返さない為に、失わない為に。

守りたいものの為に。

「氷月さん?」

ふと気付くと、神無が気遣うような瞳を向けていた。

「ああ……。何?」

「あ、ええと。今夜は何を食べたいですか?」

普通に返事があった事にほっとした様子で、微笑んで続ける。

「食べたい物があったら、遠慮無く仰って下さいね」

あの建物には大勢の人が住んでいる。

食堂というものもあるらしいが、神無はいつも鏑と氷月の分の食事を作っていた。

「今日は僕も手伝うよ」

「え?でも……」

「いつまでも何もしないで、食事だけ貰ってる訳にも行かないし」

そう言うと、神無が感心したように見詰めて来た。

「氷月さん、しっかりされてますね」

「別に、普通だろ」

「そんな事無いですよ。いきなり一人で知らない所へ来て戸惑っているのに、何かしようと思うなんて。まだお若いのに、しっかりされてますね」

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