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そう思った時、誰かの手が額に触れるような感覚があった。

小屋で伏せっていた頃を思い出す、懐かしい感覚。

(神無……)

その名を心で呼んだ瞬間、ふっと意識が覚醒した。

ゆっくりと目を開けると、微笑む娘の姿が見える。

「良かった……!気が付いたんですね」

耳に届く、柔らかな優しい声。

(神無……?)

唇を動かして呼ぼうとしたが、上手く言葉が出て来なかった。

黙ったまますぐ側に座る娘を見詰め、妙な事に気付いた。

いつも質素な衣を着ていた彼女だが、今は違う。

淡い色合いの見た事も無い形の衣の上に、白く薄い羽織のような物を着ている。

耳には小さな飾り玉が光り、首にも細い首飾りがあった。

表情もあの頃よりずっと大人びている。

しかし間違う筈は無かった。

その顔も声も、彼女だ。

間違える筈が無い。

彼女が自分を見ても何も言わないのが不思議だけれど。

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Reservoir Amulet2