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此処から、始まったのだ。

全ては始まりへ還り着き、思いも寄らぬ道を開く。

悲劇かと思われた結末の、その先へと。

だから今こそ、全てを受け止めて突き進む。

二人の姿がかき消えて、静寂の落ちた村。

ただ燃え盛る炎だけが、生き物のように。

朱く朱く、舐め尽くして行く。

そこへ、ゆらりと人影が現れた。

太刀を携え、単身炎の中へ踏み込む様は、まるで。

阿修羅か何かのようで、見ているだけで背筋が凍った。

その人物は目を細めて呟く。

「……今の光は」

どうやら先程の光を不審に思い、一人で戻って来たらしい。

まだ返り血が付いた衣のままの頭領は、今にも崩れ落ちそうな小屋の前まで来て眉をひそめた。

「血の跡はあるが、屍が無いな」

自分が手を掛けた娘の亡骸が無い事を訝しみ、低い声を発する。

「……逃れたか」

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