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「……朱月と、あの時の娘か」

声は低く、はっきりと届く。

人の体を失っても、彼は氷月の知る頭領の姿のままだった。

その内に積み重なった人の思念が、姿を保たせているのかもしれない。

体温も鼓動も感じられない様は、幽霊と表現されて良い状態だ。

けれど全身から放たれる禍々しき気が、そう呼ぶにはあまりに強い存在を示している。

「我に挑むと言うのか。勝てぬと教えてやっただろう」

「……勝てるよ」

もう、怖いとは思わない。

心は凪ぎ、落ち着いている。

「我に勝つという事は、人の想いとやらの強さを示すという事だ。出来るというのか、お前が」

「出来るよ。僕はもう、昔とは違うから」

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