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何も持たず何も知らず、ただ傷付けながら生きていたあの頃とは。

「僕は人の想いを幾つも見た。見て触れて、知った。だから貴方にも勝てる」

「何があってもどんな事があっても、私達は変わりながら生きて行く。どんな変化も受け入れて、しなやかに強かに。それが人の持つ強さです。貴方は忘れてしまったのでしょう。長い間存在し、世界を見て来たが故に」

「…………」

口を開いた神無に目を留め、頭領は沈黙した。

それから、低く呟く。

「成程。あの女が信じただけの事はある」

無数の影の帯を纏う、その雰囲気が大きくなる。

飲み込まれそうな程に。

「では、示してみせろ」

全てを飲み込む程の黒き思念を一身に集めている彼は、長い長い時を何を考えて過ごして来たのだろう。

想像など、今はしていられないけれど。

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