14


夜の空気は冷たく凍てつき、肌を刺すようだ。

昼間は賑やかな通りでも、今は歩いている者は少ない。

しかし、夜は更けても街は明るい。

「……此処は、夜でも光が沢山あるんだね」

ぽつりと呟くと、隣を歩く神無が窺うような目を向けて来た。

「氷月さんが以前いた所では、夜は暗いんですよね」

「そうだね。外に出れば灯りなんてほとんど無いから。照らすのは星と……月の光だけ」

いつも闇路を照らすのは優しい光。

淡く柔らかな、美しい光。

「月が好きなんですか?」

ふと問い掛けられて見返すと、神無は何も知らない瞳で続ける。

「とても優しい目で月を見ていらっしゃいますし、お名前も氷月さんですものね」

「……そう、だね」

曖昧に頷いた瞬間、時が戻ったような気がした。

『それなら、氷月。……思い出せるまで、そう呼んでいい?』

額に触れる、柔らかな手のひら。

目に映った娘の、眩しい眼差し。

穏やかで暖かに流れ出した時。

耕す土の匂いと心地良い疲れ。

並んで見上げる満天の星空。

そして、浮かぶ月。

『私、冬の凍るような月が好きなの』

- 32 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet2