16
「さて、そろそろですね」
鋭く落ち着いた声が、氷月の思考を遮った。
神無が足を止めたのは、夕方の買い物の帰りに通り掛かった道だった。
その視線が向く先に、街灯に照らされて浮かび上がる妙なものがある。
「何……あれ」
黒くぼんやりとした、影のようなもの。
煙の塊のようにも見えるが、そこからは明らかに何かの意志が感じられた。
長い間研ぎ澄ましながら生きて来た、感覚が告げる。
あれは害意を持って、そこに在る。
神無は少しの間じっと影を見詰めていたが、やがて動いた。
コートのポケットに手を入れ、携帯電話を取り出す。
素早くボタンを押すと、耳に当てて言った。
「影魂【えいこん】、確認しました。これより鎮静に入ります」
向こうからの返事を聞いて、電話を切る。
すると、微かな音と共に神無の手元に細長い物が現れた。
神無がそれを掴むと、何処からともなく出て来た物が、しっかりと手に握られる。
その冴えた輝きを見て、氷月は思わず息を飲んだ。
- 34 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet2