08
「そうそう。折角だし、仲良くなれた方が楽しいもの」
同意した女性は、明るい声で続けた。
「私は、神崎ひかり。宜しくね、氷月君」
「……兄妹?」
二人を見比べて氷月が尋ねると、神無は慌てたように否定する。
「ち、違いますよ!勇さんとひかりさんはご夫婦です」
「やっぱりそう見えるよな。年は離れてるし、ひかりは幼く見えるし」
気を悪くした様子も無く笑った勇を、ひかりが軽く殴る。
「幼く見える、は余計だよ!」
「本当の事を言っただけで殴るなよ」
言い返した勇をもう一発殴ってから、ひかりは神無の方を向いた。
「神無ちゃんも、宜しくね。一緒に見回りは久し振りだし」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
「よし、そろそろ行くか」
勇の言葉を合図に歩き出しながら、氷月は思わず目を伏せた。
無意識の内に手で探るのは、胸元の簪。
どうして此処で会う人達は、皆こんなに暖かいのだろう。
こんな自分に、どうして当たり前のように優しくしてくれるのだろう。
どうして人は暖かく優しくなるのか。
どうしたら暖かく優しくなれるのか。
もしも今からでも間に合うのなら。
返して行きたい。
奪うより傷付けるより、築き上げて行けるような。
そんな人になりたいから。
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Reservoir Amulet2