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「……別に」

氷月は首を振り、今の思考を頭から追い出した。

考えても仕方の無い事だ。

どうであれ、自分は自分に出来る事をするだけだ。

こんな穏やかな日々が、唐突に壊れてしまう事もあると知っているから。

『私、貴方に会えて……本当に幸せだったよ……』

繰り返したくはないから。

あの狂おしい痛みを。

「まあ、異常は無かった事だし、今日のところは帰るか」

じっと氷月を見ていた勇が、明るく言って歩き出す。

その後に続きながら、ひかりが親しげに神無に話し掛ける。

「神無ちゃん。仕事とかにも、もう慣れた?」

「はい、おかげ様で」

「何かあったら、いつでも相談してね」

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