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鏑はその声に、僅かに苦悩を滲ませた。

「本当はこんな事をすべきじゃないんだろう。本人の意志を確かめもしないで、無理矢理時を越えさせるなんてな。実際、反対の声も幾つも上がった。だが、研究は進められた。時空間移動制御装置のな」

「じくうかんいどう?」

耳慣れない言葉を繰り返すと、神無が隣で補足した。

「人に時を越えさせる装置です。使い方一つ間違えれば大きな混乱を招くかもしれない事から、過去にも破壊するようにとの動きがありました。しかし、起きた問題に対処する為に、改良を重ねられてここまで来ました」

「体に掛かる負担が大き過ぎるから、中々試す事も出来ないしな。それに、こっちから行くならとにかく、呼び寄せるとなると難しい。お前が此処へ来たのは奇跡だな」

少しの間黙り込んでから、鏑は真剣な瞳を氷月に向ける。

「あの装置は人が死ぬ間際の、強い心の叫びに反応して呼び寄せる。……お前も、そんな痛みをくぐって来たんだろう」

死に直面しなければ分からない、計り知れない痛み。

体の痛みと、心の痛み。

切り裂くような、魂を焼き焦がす程の痛み。

氷月は何も言わない神無を見た。

こちらを案ずるような深い憂いをたたえた瞳に見詰め返され、胸の奥が疼いた。

「……僕の痛みなんて大した事じゃない。もっと辛い目に遭った人が沢山いるから」

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