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見回りに行く支度を整えて研究所の入り口で待っていると、後ろから明るい声が聞こえて来た。
「待たせちゃって、ごめんね」
「お待たせしました」
ひかりと神無の声だ。
振り向いた氷月の瞳に、華やかな赤い着物が飛び込んで来た。
咲き乱れる絢爛の花の美しさに、思わず目を奪われる。
「似合ってるよね?神無ちゃん、すぐに着こなしちゃって凄いよ」
ひかりが得意そうに言い、氷月ははっと我に返った。
見た事も無い程豪華な着物だというのに、何だろう。
それを纏う神無を見た瞬間に覚えた、この妙な懐かしさは。
「ほら、氷月。ぼーっとしてないで、褒め言葉の一つ位言えって」
横に立つ勇が腕をつついて小声で告げて来た。
それを知らない神無は、いつも通りに口を開く。
「そろそろ見回りに行く時間ですよね。今日も宜しくお願いします、氷月さん」
「……うん。ええと、それから」
氷月が言い掛けると、空気を読んだらしい勇とひかりが自然な感じで言い出した。
「さて、ひかり。俺達は仕事に戻るか」
「そうだね。じゃあ二人共、見回り宜しくね」
自然な感じ過ぎてかえって不自然に思える笑顔を残し、二人は速やかに立ち去った。
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Reservoir Amulet2