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「じゃあ、帰って来た人がいなくなる前より無気力になったのは……」

「自分の心の一部を失ったからでしょうね。心は目に見えなくても、人を形成する大切なものですから」

翼の紺青の瞳に、黒い影が落ちた。

「そうなってしまってはもう、二度と以前のその人には戻れない。失われた心は二度と戻らない。最近になって姿を消す人が増えたのは、向こうももう隠す気も無いからでしょうね。原因が分かる者も限られていますし」

「……本気で世界を壊そうとしているのか」

「そんな事はさせません」

凛とした声は静かで力強く、そして何処か自分自身に言い聞かせているようだった。

「今出来る事は限られていますが、時が来ればこちらから仕掛けられます。沢山の人や、人でないもの達が生きる世界を、壊させたりはしません」

「どうして貴女がそこまで必死になる?」

大地は自分でも気付かない内に尋ねていた。

「見ていると、まるで自分自身より大切な事のように貴女は動いている。大き過ぎて見えない世界の為に」

時に残酷で無情な世界の為に。

今も何も知らず流れる世界の為に。

「どうして、そこまで必死になれるんだ?」

「……その為に、私は此処にいるからです」

『貴方の意志とは関係無く、事は動いた。これもやはり定めなのでしょう』

翼の何処か寂しげな微笑に、何故か以前の彼女の言葉を思い出した。

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