03
朝日に照らされる神社の境内に出る。
そこには既に、箒を手に掃除をしている巫女の姿があった。
こちらを見ると、手を止めて微笑む。
「おはようございます、大地さん」
「おはよう。毎朝早いな、貴女は」
「今日はお客様がいらっしゃるので、気合いを入れてお掃除を」
「客?」
訊き返すと、翼は嬉しそうに箒を握り直す。
「ええ。氷月さんと神無さんですよ」
「連絡があったのか?」
昨日はそんな事は聞いていなかったから、驚いて尋ねる。
「いいえ。でも分かります。何となくですが」
「凄いな、相変わらず」
心底感心して言うと、翼は悪戯っぽく笑って付け足す。
「大地さんの気配も、勿論分かりますから。人混みではぐれても安心ですよ」
「貴女がその格好をしていれば、目立ってすぐに見付かるだろう」
「嫌ですよ。お勤めでもないのに装束を着ていたら、コスプレだと思われてしまいます」
「……まあ、偶然姉貴に会ったりしたら大騒ぎだろうな」
こんな風に、何気無い会話を交わす事が日常になった。
家族や親しい人に事情を説明し、この神社で暮らすようになった。
とはいえ、全てを話しても到底理解はされないだろう。
時の流れから離れた事を知る、ごく親しい人以外には、もう思うようには会えない。
その事に、寂しさを覚えない訳ではないけれど。
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