05


「あっ、すみません」

翼が慌てた様子で、千早の袂から携帯電話を取り出し耳に当てる。

「…………」

咄嗟に渡された箒を手に、大地は一人溜息をついた。

携帯というのは便利なようで、こういう時に不便だ。

翼が何だか嬉しそうに応対していて、二人の時が中断されたのを全く気にしていないようなのも面白くない。

電話の相手が誰なのか予想はつくから、怒る気にはならないけれど。

「大地さん」

やがて電話を切った翼は、瞳を輝かせて言った。

「連絡がありましたよ。氷月さんと神無さん、今日いらっしゃるようです」

「そうか。じゃあ気合いを入れてもてなさないとな」

「はい!」

彼女がこんな風に笑うという事に、ずっと側にいるようになって気付いた。

本当に嬉しい時には、巫女として振舞う時の落ち着きや鋭さを忘れさせる程、目を細めて幸せそうに笑う。

その笑顔を見る度、胸が締め付けられる。

自分が消えてもいいと、ずっとそう思いながら。

一人で生きて来た長い孤独を思うから。

今は、もっともっと笑っていてほしい。

翼が笑ってくれていれば、それだけで。

それだけで、この世界には美しい想いが満ちて行くと思えるから。





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