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大地は溜息をついて、心優しい巫女に目を向けた。

恐らく最初の頃からこうなると分かっていた彼女が、誰よりも辛かったのではないだろうか。

それでも殺人を見過ごさず、敢えて嫌な役目に自分を置いた。

その上で他人を気遣えるのだから、この若さでどれ位の懐の広さをしているのか。

「安心していい。矢島さんは私情の為に仕事を忘れるような人じゃない。俺と同じで、貴女に感謝している」

「……そうでしょうか」

躊躇いがちに向けられた、深い色の切れ長の瞳に笑い掛ける。

「だから俺が抜けるのを許してくれたんだ。さすがに煎餅を買う時間は無かったからな。貴女を送るついでに、気晴らしに何処かにお連れしろと言われたぞ」

驚いたように目を瞬いた翼は、少ししてから微笑んだ。

「矢島さんらしいですね」

「ああ。それに俺は、今日は休みだしな」

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