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「……じゃあ、綺麗なだけじゃないものも世界に残ってしまうかもしれませんね」
「うん。悲しいけど、そうだね。憎しみも恨みも、確かに人は持っているから。だから今も、そんな思念と立ち向かおうとする人達がいる」
ソムニウムは息をつき、凍てつく空を見上げた。
「時と場所を移しながら、大切なものを守る為にね。守りたい、それだけで未来を定めを変えて行くんだ。どんな悲劇も乗り越えて行くんだよ」
「それも人の想いですよね。だから、美しい想いが残って行くようにしないとならない」
暗く淀む思念と呼べるものを、美しい想いで塗り替える。
そうして保って行くのだ。
慈しむべき、尊い世界を。
これまで築かれて来た、受け継がれて来た、かけがえの無いものを。
「そうだよ。その為に、夢と幻想はある。現実に生きるだけじゃ失われてしまう気持ちを忘れない為に。忘れたとしても、いつかまた不意に思い出せるように」
ソムニウムはそう言うと、結芽の顔を覗き込んだ。
夢を語る彼の瞳は少年のようでもあり、あらゆる事を知り尽くした年長者のようでもあって。
思わず目が逸らせなくなる。
「僕が今夜語ったのは、全てこれまでに誰かが紡いだ物語だ。そして世界には他にも数え切れない程のファンタジーが溢れてる」
「そう考えると、素敵ですね」
「うん。本当に」
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Reservoir Amulet2