行き違う思惑
総悟くんに無理やり居酒屋に連れてかれて飲んでたら、退さんが突然現れた!
一緒に飲みたいのかなって思ったけど何か心配してる様子だし、総悟くんはまだ飲みたいって駄々こねてる。どうするのが正解か分からなくて悩んでたら、今度は「今日はこのまま泊まりたい」って言いだす総悟くん。だったら家に来なよって提案した。それなら帰ることも、朝まで飲むことも両方が叶う。名案だと思ったけど何故か2人とも目は死んでた気がする。
「んふふ、今日はたのしいねぇ」
「ひとり邪魔なのがいるけどな」
「な…!俺だってふたりが良かったですよ」
「仲良しさんだねぇ」
夜の街を3人で歩く。総悟くんとはめずらしく腕を組んで、退さんは僕を支えるように腰を抱いている。大好きな人たちに囲まれて上機嫌になった僕は、歌いながらこんな日が続いたらいいなって思った。
全然覚えてないけど気づいたら3人で僕の部屋にいた。退さんに進められるままお水を飲んで、でもまだ飲みたくて総悟くんにお酒をねだる。ふたりはずっと僕の話をしているようで、総悟くんは僕がいかに学校でドジをふんでるかをバラしてくるから、退さんにはいいかっこしいだったのに努力が水の泡となった。逆に退さんも僕の甘えきった私生活をバラすし、生活力のなさを総悟くんに知られることとなった。それにほっぺを膨らませていれば、少しずつ眠くなってきて手に持っていた缶は奪われていた。
「あたまいたい」
久しぶりに限界まで飲んだ。眩しい視界にズキズキと痛む頭を抑えながら起き上がると、まだ寝ているふたり。ふたり?!なんで退さんと総悟くんがいるんだろう。しかも僕を真ん中にして川の字で寝てたみたい。床で。そのせいで頭だけじゃなく全身がバキバキに痛んでる。
「ん、起きたかィ……」
「おはよぉ総悟くん。昨日って何があったの?」
「何って……あんなに愛し合ったのに覚えてねーのかよ」
薄情者と言いながら泣きだした総悟くんに嫌な予感がして、頭を抱えながら必死に思い出す。何もしてないよね?!だって僕たち友達だし、そもそも退さんがいてそんなことになるはずないのに!すると突然後ろから腕が伸びてきて抱きしめられる。
「沖田さんのちょっかいからは俺が守りました」
「退さん!?」
「おはようなまえくん。もうあんなにお酒飲まないでね?酔った姿も可愛いけど、いたずらされちゃったら困るよぉ」
退さんが僕の首すじにぐりぐりと頭をくっつけてきて、多分まだ寝ぼけてるみたい。いつもより多めのスキンシップがめずらしくて、僕はえへへと笑った。退さんこそ可愛くて困るよぉ。
「離れななまえ。そいつ昨日お前のケツ揉んでたぜ」
「な!ちょっと…!」
「なんならお前が寝てる間にケツほじろうとしてたし、ちんこまでおったててやがった」
「退さんがそんなことするはずないじゃん!嘘つかないでよ!」
「沖田さんだってなまえくんのピンク色乳首に興奮して、乳首コキしようとしてましたよね」
「えっ何それ!」
舌をべえっと出して僕をからかう総悟くん。ふたりして朝からえっちなこと言うの止めてよね。嘘でも言っていいことと悪いことがある。朝ごはん抜きにしちゃうからね。
それから総悟くんのスキンシップが激しくなった。肩を小突いたり、たまにおしり揉んだりするいたずらはあったけど、抱きついてくるのは今までになかった。あのドSの総悟くんが学校でこんなことしてると、僕だけじゃなくて周りもザワザワする。退さんとの時間が増えて、かまえなかったからこんなことするのかな。
「さみしかったの?最近あんまり遊べなくてごめんね?」
「バカかオメーは。好きだからに決まってんだろ」
「えへへ、僕も総悟くんのこと好きだよ」
めずらしくデレた総悟くんに喜んでしまった。そしてこのやりとりを聞いていた同期たちは勘違いしてまた騒ぎ始める。僕が違うと言っても照れ隠しと思われてしまうし、総悟くんはあえてこの冗談に乗っかっている。もしかしたらそういう仲良しの仕方もあるのかもしれない。女の子達が腕組んだり、友達を好き好き言ってることと何ら変わらないと。だったら別にいいかなって放っておいた。この時の僕はまだ本当の意味を知らなかったのだ。
スキンシップ過剰の総悟くんに対して、退さんは変わらずいつも通り一緒にご飯食べて、ゲームしてそこそこ長い時間を過ごしている。そのほとんどが僕を甘やかしてくれるから、これが大人の余裕なのかなって総悟くんと比べてしまう。でも退さんには無理させているんじゃないか。そもそも僕がかまってくださいってお願いして、今日だって退さんがご飯を作ってくれた。でも僕がしたことはテーブルを拭いて、お茶碗にお米をよそっただけ。こんな子供のお手伝いレベルの僕なんてどう思っているかわからない。しぶしぶかまってるだけだったらやだな。
「なまえくん、大丈夫?」
「え、ああ…ごめん、ぼーっとしちゃってた」
「今日は早めに寝なね。そういえば沖田さんは元気?」
「元気すぎるくらいだよ。最近やたら抱きついてくるから困っちゃう」
「相変わらず仲良いね」
「そのせいで周りから付き合ってると思われてるんだよ?いっつも同期にからかわれるし、総悟くんもそういうフリしてくるの」
「へぇ……」
あれ?もしかして僕変なこと言った?退さんのお箸が止まった。
「なまえくんは嫌じゃないの」
「総悟くんは友達だから別に……多分ふざけてるだけだし、仲良しって感じで嬉しいかも?」
「それなら俺と会ってる時間、沖田さんにかまってあげた方がいいんじゃない?」
「え……」
「だって俺たち友達ではないだろ。ただのちょっと仲のいいお隣さんだし」
退さんには無理させてるんじゃないかって考えは、当たっていたのかもしれない。僕は多分何かを見落としていて、きっと退さんが嫌がってたのにも気づいてなかったんだ。甘えすぎた結果に何にも言い返せなくて、泣きながら部屋に戻った。
でも僕のこと、特別って言ったのにひどいよ。
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