旅は道連れ世も道連れ
プルルルルル―――プルルルルル―――
リビングの固定電話が鳴った。急いで向かうものの手が届かない。そうこうしていたら音が止まってしまった。この体、ほんっと不便。
椅子を持ってきてなんとか電話に手が届いた。着信履歴をみると見覚えのある番号の羅列に瞠目する。蘭からだ。
冷や汗が背中を伝った。蘭が新一を探し始めている。もしかしたら私の事も捜しているかもしれない。
苛立ちながら向かいの工藤邸を見る。するとさっき閉じていた門が開いていた。帰って来たのかもしれない。
玄関に置きっぱだった赤い水玉の傘をかっさらい、急いで新一の家に向かう。門を通ると書斎に明かりが点いているのが見えた。
ガチャリと開いた扉から現れたのは今最も会いたくなかった人だった。
「あら、あなたどうしたの?」
優しく訪ねてくる彼女に答えることができない。書斎に入った途端、出迎えてくれたのは蘭だった。
彼女の背中越しに博士と目が合う。……他人が慌てていると逆に自分は落ち着くもんだよね。
「かわいー!お名前は?」
「…江戸川ルオン」
「そっかー!ルオン君っていうのね!私は毛利蘭。よろしくね」
満面の笑顔の彼女に頭を撫でられた。なんか不服だ。
一先ずこの場は凌ぐことができたみたい。博士と蘭が話しているのを横目に書斎の机に近づく。そこには案の定、幼児化した新一がいた。
「…変装したら?」
小さめの声で話しかけると新一が顔を上げる。
「…おめぇ、誰だ?」
「天音だけど」
「おまっ「馬鹿」」
私が思わず叩いた瞬間、書斎に鈍い音が響いた。咄嗟にそこらへんにあったメガネを彼にかける。これでよし。私はすぐにその場を離れた。
「な、名前は新…でもなくて…」
「ん?」
「え、えーと、えと……コナン!!!ボ、ボクの名前、は江戸川コナンだ!!!」
…なんで同じ名字を思い付いちゃうかな。偶然でもちょっと怖い。
「何か似てるなぁ、新一と天音に…ところで名字が同じってことは、ルオン君も博士の親戚なの?」
「うん、コナンのイトコだから」
「はぁっ?!何言って…」
反論してきた新一の口を博士が塞いだ。ナイス博士。
必然的にそうなるよね。親戚っていうにも博士の親戚の親戚って何?ってなるし一番無難だと思う。
なるほど、と納得する蘭を余所に博士はしゃがんだ。
「さっき新一から聞いたんじゃが…君も未完成だった毒薬を飲まされたせいで、小さくなってしまったそうじゃな」
新一が博士に打ち明けたという事実に驚く。でも協力者としては申し分ない。
「まあね…ただ一つお願いがあるんだけど」
「なんじゃ?」
「実は……」
この書斎で博士を見てから思いついた案を話すと彼は目を見開いた。
「ほ、本当にそれで良いのかね?」
「博士が迷惑じゃなければ」
「いや、わしは迷惑なんかじゃないぞ!…わかった、天音君の言うようにしよう!」
「ありがとう博士、助かるよ」
博士はサムズアップを見せた。こういう時、やっぱり大人は頼りになる。内容を知らない新一はただ不思議そうに立っていた。
「おお、そうじゃ、蘭君!すまんが少しの間、コナンを君の家で預かってくれんか?」
「え?」
「いやー、この子達の親が事故で入院したんでワシが世話を頼まれとったんじゃが、何せ、男の一人暮らしの上、二人ともなると…」
「いいけど…お父さんに相談してみないと…」
急に提案した阿笠博士に冗談じゃないと新一が飛びかかったが直ぐに押さえつけられた。博士は新一の説得している間、何気無しに蘭を見る。バッチリ視線が噛み合った。
「ルオン君はどうするの?ルオン君も私の家に来る?」
「博士と一緒がいい。博士一人じゃかわいそうだし」
迫真の演技と嘘だ。自分を褒めたい。
全ては効率良く黒づくめの奴等を探すため。別々の場所で倍の情報量を手に入れようという魂胆だ。デメリットは奴等に見つかったら一人で何とかしなくちゃいけないということ。
あとは……どんな形であれ二人は共にいるべきだと思ったから。
「おい天音。何で一緒に来ねぇんだよ」
玄関に向かって皆んなで歩いている途中。こそこそと新一が耳打ちしてきた。
「博士から聞かなかった?」
「けどなーそれは危険過ぎるだろ」
「……奴等の居場所を突き止めるコトが最優先でしょ」
「けどっ!」
「けど、何?他に得策でもあるってわけ?ないでしょ?」
睨み合う。いつもならここで蘭が止めに入るけどこの姿だと止めてくれる人はいない。
「だぁぁぁあっ!わかった!けどくれぐれも無茶すんじゃねぇぞ」
「それはお互い様じゃん」
いつも根負けするのは新一。彼は苦々しい顔をした。分かってて意見を押し通す私は根がねじ曲がってる。